
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性的接触によって感染するウイルスで、子宮頸がんや尖圭コンジローマなどの原因となります。
HPVは感染しやすい一般的なウイルスで、性交経験を有する人の大半が一生に一度は感染する、といわれているウイルスです。このページではHPVの感染経路、症状、検査方法について詳しく解説します。
目次
HPVとは?

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、男女問わず感染する一般的なウイルスです。現在までに200種類以上のHPVが発見されており、そのうち約40種類が性器や肛門周囲の粘膜に感染します。
HPVは大きく分けて「低リスク型」と「高リスク型」の2つに分類されます。
低リスク型HPV | 主に尖圭コンジローマの原因となるタイプです。代表的なものに6型と11型があります。 |
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高リスク型HPV | 子宮頸がんや陰茎がん、肛門がん、咽頭がんなどのがんを引き起こす可能性があるタイプです。特に16型と18型はがんになるスピードが速く、子宮頸がんの約70%の原因となっています。 |
多くの場合、感染しても自覚症状がなく、免疫力によって1〜2年程度で自然に排除されます。しかし、一部の人では持続感染となり、数年から十数年後にがんなどの深刻な病気の原因となる場合があります。
HPVの感染経路|性行為で感染する?
HPVは主に性行為や性的接触によって感染します。
感染は粘膜や皮膚の接触で拡がるため、挿入の有無に関わらず感染する可能性があります。コンドームを使用してもHPV感染を完全に防ぐことはできません。
男性女性も、もっとも感染機会が多いのは性体験を始めた直後で、中でも日本人女性のHPV検出率は、10歳代~20歳代で最も高く、20%前後と報告されています。
女性がHPVに感染する主な原因は、パートナーである男性がウイルスを保有していることによるものです。男性は多くの場合HPVに感染していても無自覚なため、知らない間に女性のパートナーにウイルスを感染させてしまうケースが少なくありません。
HPVの感染は、オーラルセックスやキスなどを通じて口腔内にも起こる可能性があります。
HPVの潜伏期間
HPVの潜伏期間はウイルスの型によって異なります。
低リスク型HPV
潜伏期間はおよそ3週間から8カ月であり、平均的には約2.8カ月で症状が現れるケースが多いです。この場合、性器や肛門周辺にイボができることがあります。
高リスク型HPV
自覚症状がほとんどなく、感染から10年以上経過してから細胞の異常やがんとして発見されるケースもあります。特に子宮頸がんや不妊など、女性はHPV感染による健康被害リスクが特に大きいとされています。
このように、HPVは感染してから症状が現れるまでに長い時間がかかる場合が多くあります。その間に他の人に感染させる可能性があるため、定期的な検査が重要です。
HPVに感染したら性行為はできない?
HPVに一度感染したからといって一生性行為ができなくなるわけではありません。しかし、治療中であったり、症状が出ていたりする期間は、パートナーへの感染リスクを減らすために性行為を控えましょう。
また、感染が確認された場合は、パートナーにも検査を受けてもらうことをお勧めしています。
定期的な検査を行うとともに、感染が疑われる症状がある場合は、定期検診を待たず早めに検査・治療を受けることが大切です。
HPVの男女別の症状と起こりうる感染症・がん
HPV感染による症状や疾患は、男女によって異なる場合があります。男女別の主な症状と関連疾患について説明します。
HPV感染による男性の疾患

男性の場合、HPVに感染しても多くが無症状です。しかし、以下のような症状や疾患が見られる場合もあります。
尖圭(せんけい)コンジローマ):陰茎、亀頭、包皮、睾丸、肛門周囲などにカリフラワー状のイボができます。痛みはほとんどありませんが、時に出血や痒みを伴うことがあります。
陰茎がん:高リスク型HPVに感染して長期間持続感染が続くと、陰茎がんを発症するリスクが高まります。
男性は多くの場合HPV感染に気づかないため、無自覚のまま女性パートナーに感染させる可能性があります。男性側も定期的な検査を受けることが大切です。
※池袋マイケアヒルズタワークリニックでは、男性のHPV検査は実施していません。予めご了承ください。
HPV感染による女性の疾患

女性の場合、HPV感染によって以下のような症状や疾患が見られる可能性があります。
尖圭(せんけい)コンジローマ):外陰部、腟内、子宮頸部などにイボができます。
子宮頸部異形成:高リスク型HPVの持続感染により、子宮頸部の細胞に異常が生じる場合があります。これは「前がん病変」と呼ばれ、放置すると子宮頸がんに進行するリスクがあります。
子宮頸がん:持続的な高リスク型HPV感染により、発症するリスクが高まります。初期段階では症状がないケースが多いですが、進行すると不正出血やおりものの増加、腰痛などの症状が現れます。
腟がん:女性生殖器がんのまれな疾患です。高リスク型HPVの感染が原因で発症する場合があります。
子宮頸がん検診は、20歳以上の女性を対象に2年に1回の受診が推奨されています。20歳を過ぎたら、定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
HPV感染による男女共通の疾患

HPV感染は性器だけでなく、口腔や咽頭部にも影響を及ぼす場合があります。
肛門がん:高リスク型HPVの感染により、肛門がんのリスクが高まります。
中咽頭がん:口腔性交などによって口腔内にHPVが感染し、のどの奥にある中咽頭部のがんを引き起こすリスクが高まります。
口腔がん:HPV感染が口腔がんの一部の原因となる場合があります。
口腔・咽頭部のHPV感染は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。のどの違和感や痛み、しこりなどがある場合は、専門のクリニックを受診しましょう。
感染を防ぐHPVワクチンとは?
HPVワクチンは、HPV感染とそれによる疾患を予防するためのワクチンです。現在、日本では高リスクの型に対応した、3種類のHPVワクチンが承認されています。
ワクチンは主に10代前半から接種することが推奨されており、日本では小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象に定期接種として公費で受けられます。男性も任意接種として受けることが可能です。詳細は、厚生労働省の「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」をご覧ください。
ワクチンには、すでに感染しているウイルスを排除する効果はありません。そのため、ワクチン接種後も定期的な検査や検診が重要です。
池袋マイケアヒルズタワークリニックではHPVの検査が可能
池袋マイケアヒルズタワークリニックでは、子宮頸がんのリスクとなる高リスク型HPVの検査と、より詳細な情報を得るためのタイピング検査を実施しています。
HPV(高リスク型)検査
子宮頸がん検査と合わせて、将来がん化しやすいたんぱく質遺伝子を有しているのか検査します。
検査項目 | HPV(高リスク型) |
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検査方法 | 腟ぬぐい液による採取 |
検査時期 | 感染の機会からすぐに受けられます |
検査結果 | 4~5日後(Web確認可) |
HPVタイピング検査
ハイリスク型HPVのどの型に感染しているか確認する検査です。対象となるのは、ハイリスク型HPVのみになります。
検査項目 | HPV型別 |
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検査方法 | 腟ぬぐい液による採取 |
検査時期 | 性交渉歴があればいつでも受けられます |
検査結果 | 14日後(Web確認可) |
検査で陽性と判定された場合、より詳細な精密検査(コルポスコピー+組織検査)が必要になる場合があります。当クリニックでは、必要に応じて提携クリニックへのご案内が可能です。
料金表
HPV(高リスク型)8,800円
子宮頸がん検査と合わせて、
将来がん化しやすいたんぱく質遺伝子を
有しているのか検査します。
- 検査方法
- 女性:腟ぬぐい液
- 検査時期
- 感染の機会からすぐに受けられます。
- 検査結果
- 2~5日後(Web確認可)
HPVタイピング検査27,500円
ハイリスク型HPVのどの型に感染しているか
確認する検査です。
対象となるのは、ハイリスク型HPVのみに
なります。
- 検査方法
- 女性:腟ぬぐい液
- 検査時期
- 性交渉歴あればいつでも。
- 検査結果
- 14日後(Web確認可)
来院が難しい方は郵送検査キットがおすすめ
池袋マイケアヒルズタワークリニックでは、距離や時間的な理由で来院が難しい方に向けて、郵送検査キットを販売中です。
ご自宅にいながら性病検査ができるうえ、商材がわからないような梱包を施すなど、プライバシーにも配慮しています。
全国どこでも送料無料で、最短で翌日にキットが到着するので、ご来院が難しい方はぜひご活用ください。
感染の機会からすぐに受けられます。

HPVに関するよくある質問
HPVの検査は痛いですか?
池袋マイケアヒルズタワークリニックでは、腟内に綿棒のような器具を挿入して細胞を採取する、ほとんど痛みのない検査を実施しています。内診台に登っての検査はありませんので、ご安心ください。当クリニックでは女性の検査のみ対応しています。
HPVに感染したら一生治らないのですか?
HPV感染は免疫システムによって1~2年以内に自然に排除される場合がありますが、一方でウイルスが長期間体内に残り続ける「持続感染」となる可能性もあります。持続感染の場合、高リスク型HPVではがんのリスクが高まります。HPVが自然排除されるかどうかは、生活習慣、感染したHPVの型、ホルモンバランス、免疫力など個人差が大きくあるため、定期的な検査が大切です。
コンドームはHPV感染を防げますか?
コンドームの使用はHPV感染のリスクを下げますが、完全に防ぐことはできません。HPVは、性器周辺の皮膚や粘膜との接触によっても感染するため、コンドームでカバーされない部分からの感染が起こります。ただし、コンドームは他の性感染症(HIVやクラミジアなど)の予防には効果的です。性行為を行う際は、引き続き使用するようにしましょう。
HPV検査で陽性だった場合、必ずがんになりますか?
HPV検査で陽性だったからといって、必ずしもがんになるわけではありません。しかし、高リスク型HPVに感染し、それが長期間持続した場合は、がんになるリスクが高まります。高リスク型HPVの持続感染から子宮頸がんなどのがんが発生するまでには通常、数年から10年以上かかるとされています。そのため、定期的な検査によって前がん病変の段階で発見し、適切な治療を行うことが大切です。